下肢静脈瘤の検査方法

- 下肢静脈瘤の正しい診断には、患者様への問診に加えて、下肢超音波検査が必須となります。
- 以前は、特に大きな総合病院などでは、下肢静脈瘤の診断の為に、造影剤を使ったレントゲン検査やCT検査なども行われていました。
これらの検査では、造影剤を注入するための点滴処置が必要となり、検査の段階で患者様に少し痛い思いをしてもらわなければなりませんでした。
また、得られる検査情報としても、治療適応を決定する材料になりにくいという点も問題でした。
しかし現在では、下肢静脈瘤の診断は下肢超音波検査のみで行うことがほとんどです。
下肢超音波検査では、患者様には座位もしくは立位となってもらい、医師によって下肢に超音波機器をあてて、静脈内の血液の流れる方向を確認します。 - 正常な静脈では、血液の流れる方向は常に一方通行となっていますが、静脈瘤の血管では血液の逆流が観察され、これが見られれば、静脈瘤の治療適応の可能性があると判断します。
検査の間は、患者様は先に述べたように、じっと座っているか立っているかのみで、痛みも伴うこともなく、また検査時間も片足10~15分ほどで終了します。
当クリニックでも、下肢超音波検査による静脈瘤診断を行っており、楽に短時間で診断できることから、多くの患者様に受けていただいています。
下肢静脈瘤の治療法
- 下肢静脈瘤の治療の目的は、自覚症状の改善と見た目の改善になります。
- 下肢静脈瘤では、その主な原因となっている伏在静脈(大伏在静脈、小伏在静脈)の逆流を無くすことにより、治療効果を得ます。
- 下肢静脈瘤の治療には様々な方法がありますが、どの方法にしても、手術に伴う合併症が生じる可能性は低く、仮に合併症が起きたとしても、そのほとんどが時間経過で改善するものばかりなので、下肢静脈瘤の治療は非常に安全性が高いと言えます。
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- (術後合併症として起こりうる症状)
- 血栓性静脈炎:残った静脈瘤が硬くなったり、痛くなったりすることがあります。
- 術後疼痛、内出血:時折生じますが、時間経過で徐々に回復します。
- 軽度知覚障害:足の皮膚感覚が部分的に鈍ることがありますが、時間経過で回復することがほとんどです。歩行や運動に影響はありません。
- 深部静脈血栓症(極めて稀):エコノミークラス症候群とも言います。下肢の深部にある静脈に血栓ができて足が腫れたり、血栓が肺の血管を閉塞し呼吸困難(肺梗塞)を生じることがあります。
- その他の合併症:皮膚熱傷、傷からの出血、化膿、静脈の再疎通、動静脈瘻など
- また、現在内服されている薬がある場合も、ほとんどの内服薬はそのまま飲み続けた状態で治療が可能です(一部、ステロイド剤やホルモン剤などを内服している場合は、休薬期間が必要となります。詳しくは医師にご相談ください)。
ストリッピング手術

- 従来から行われている手術で、再発率も低く、下肢静脈瘤治療の最も基本となる手術です。
- 主に、大伏在静脈瘤に行われる手術で、足の付け根と膝の内側に小切開(1~2cmほどの切開)を加えて大伏在静脈を露出し、膝の内側の傷より大伏在静脈内にストリッパーと呼ばれる長い針金のような器具を足の付け根まで挿入します。足の付け根には、大伏在静脈につながる細い静脈もたくさんあるので、それらは糸で縛って切断しておきます。その後、ストリッパーを引き抜き、大伏在静脈を摘出することで、血管ごと血液の逆流を無くしてしまいます。大伏在静脈がなくなったとしても、足にはその代わりも兼ねてくれる静脈がありますので、足の血液循環には影響なく、むしろ余計な逆流による血液のたまりがなくなるので、足が軽くなり浮腫みやだるさなどの症状が改善します。
- 手術は下半身麻酔や大腿神経ブロックといった足全体の麻酔で行われることが多く、施設によっては2~3日の入院が必要となります。
術後の合併症として広範囲の内出血や神経障害(主に足の感覚障害です)が生じることもあり、また術後の痛みも強く出ることがありますが、これらの症状は、ほとんどが時間経過で改善していきます。 - 手術時間:片足につき約15~30分
血管内焼灼術(高周波カテーテル治療、レーザーカテーテル治療)

- 下肢静脈瘤治療における代表的な手術であり、伏在静脈瘤系で施行される術式です。
太ももの内側や脹脛に局所麻酔下にて小さな針孔を開けて、そこからカテーテルと呼ばれる細長い管を伏在静脈の中に挿入します。カテーテルの先端からは、高周波やレーザー光が発生し、それらの作用により血管を内部から焼いてくることで、血管全体を閉塞させて血液の逆流を無くします。 - 再発率もストリッピング手術と同等ほどに低く、また、足には小さな針孔のみの傷しか残らないので、体の負担も軽く、美容的にも非常に優れた術式となります。
焼かれた血管はしばらくの間は体内に残りますが、約3~6カ月ほどで徐々に体内に吸収されて、やがて消失します。血管を焼くことで伏在静脈系には血液が流れなくなってしまいますが、足にはその代わりも兼ねてくれる別の静脈もありますので、足の血液循環には影響なく、むしろ余計な逆流による血液のたまりがなくなるので、足が軽くなり浮腫みやだるさなどの症状が改善します。 - 手術は足の表面のみの局所麻酔で行われるので、治療直後から歩行が可能になり、ほとんどの場合が日帰り治療となります。
術後は、一定期間、弾性ストッキングの着用が必要となりますが、合併症もほとんどなく、しいて言えば、血管にわざと軽い火傷を起こす手術なので、治療部位に軽い火傷に伴うツッパリ感やチクチク感などが生じることがあります。しかし、これらの症状も痛み止めの薬が必要となるほどのものではなく、時間経過でどんどん消失していきます。
手術時間:片足につき約5~10分
血管内塞栓術(接着剤による血管内治療)
- 血管内焼灼術に代わる次世代の治療法として、2019年12月に日本でも保険治療として認められました。主に伏在静脈系で施行される術式です。
血管内焼灼術と同様に、局所麻酔下にて血管内に専用のカテーテルを入れます。
そのカテーテルより、シアノアクリレートと呼ばれる医療用の接着剤(グルー)を注入します。
接着剤(グルー)が注入された血管を圧迫することで血管の内部が接着・閉塞されて、血液の逆流が改善される治療です。 - この治療における最大のメリットは、治療に必要な局所麻酔は最初の1度のみであり、治療中は一切痛みが生じないので、ほぼ無麻酔で治療ができることと、治療後の弾性ストッキングの着用も必須ではなく、そのまま日常生活を送ることができることです。
欧米諸国ではすでに広く行われている治療法で、治療成績も良好です。 - 注意点としては、接着剤(グルー)によるアレルギー反応(痒みや発赤など)が術後合併症として生じることがあるので、アレルギー体質の方にはおすすめできません。
他の特徴的な術後合併症としては、接着剤(グルー)は体内にそのまま長期間残存するので、術後に治療部位の違物感が残ることがあります。
接着剤(グルー)によるアレルギー反応や違物感などの合併症は、ほとんどの場合、経時的に軽快していきます。
手術時間:片足につき約15分~20分
血管内塞栓術の長所・短所
- 長所
- 治療直後から、ほぼ制限なく日常生活が可能
- 弾性ストッキングが必須ではない
- 治療中の広範囲の麻酔が必要ない
- 局所麻酔は最初の1箇所のみで治療が可能
- 短所
- アレルギー体質の方には不向き
- 皮膚表面に近い血管の治療には不向き
- 治療部位に異物感が残ることがある



高位結紮術
- 皮膚に小切開(1~2cmほどの切開)を加えて下肢静脈瘤になっている伏在静脈を露出し、できるだけその根元を糸で縛り、血管を切断する手術です。
- 血管の根元を縛ることで血液の流れを遮断し、逆流を止めるという治療になります。
- 以前は比較的よく行われていた手術ですが、再発率が高く、現在では第一選択の治療とはほとんどなりません。
過去にストリッピング手術を受けていたり、血管内焼灼術を受けた方が、数年~数十年後に再発した場合に、その再発の状況によって高位結紮術が行われることがあります。
手術は足の表面だけの局所麻酔で行われることがほとんどなので、手術直後から歩行が可能になり、ほとんどの場合が日帰り治療となります。 - 手術時間:約15~30分
硬化療法
- 主に、網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤と一部の側枝静脈瘤や陰部静脈瘤に行われる治療です。
- これらの静脈瘤は、伏在静脈瘤に比べて血管が細く、カテーテルといった管が挿入できません。
そこで、血管をカテーテルで焼灼したり、摘出する代わりに、硬化剤という血管を固めてしまう薬を極細の針のついた注射器を用いて血管内に注入します。
硬化剤を注入された血管は、血流が遮断され、やがて体内に吸収されて見た目にも消失していきます(見た目が改善されます)。
これらの血管は、もともとは目に見えないぐらいの細い血管なので、もともとの血流量が少なく、硬化剤により完全に血流が遮断されたとしても、その部位が壊死を起こすようなことはほとんどありません。 - 現在では、硬化剤と空気混ぜて泡状にしたもの(フォーム硬化剤といいます)を注入することで、より良い効果を得ることができるようになりました。
手術手技としては非常に簡単な手技ですが、比較的再発が多く、広範囲わたって治療が必要な方は、数回にわけて治療をする場合があります。また、この治療の特有の合併症として"色素沈着"というものがあり、これは硬化剤を注入した付近が茶色く痣のように残る状態をいいます。
この色素沈着は自然消失することがほとんどですが、消失するまでに1~2年かかることもあります。 - 手術時間:約5~10分(治療箇所による)
表在静脈瘤切除術
- 足の表面の比較的太いボコボコした静脈の一部分を切除する手術です。
- 伏在静脈瘤に伴う表面のボコボコした静脈を処理するときに行います。
したがって、ほとんどの場合が伏在静脈瘤の治療の時に同時に行われます。
伏在静脈瘤による表面のボコボコした静脈瘤は、伏在静脈の逆流を無くすだけで、徐々にゆっくりと消失していきます。 - しかし、この場合、これらの見た目にボコボコした静脈瘤が消失するまでには時間がかかり、また、一部の静脈瘤が残存することもあります。
そこで、見た目も早くきれいにしたい場合や、より確実に表面のボコボコした静脈瘤を無くしたい場合は、局所麻酔下に皮膚に2~3㎜の切開を加えて、直接これらの静脈瘤を取り除いてしまいます。すべての静脈瘤を取り除く必要はなく、その一部分だけでも切除しておけば、残った表面の静脈瘤もより早く、確実になくなっていきます。 - 傷も2~3㎜と非常に小さなものなので、ほとんど目立たなくなっていきます。
- 手術時間:10~20分(切除箇所による)
弾性ストッキングによる圧迫療法
- 弾性ストッキングという、足全体を外から圧迫する靴下を着用することで、足の表面の静脈に血液が溜まりにくくなる方法です。
- 弾性ストッキングは非常に圧迫感が強く、履き方にも一工夫が必要ですが、一度履き慣れてしまうと、着用している間は非常に足が軽くなり、立ち仕事なども行いやすくなります。
- しかし、これは下肢静脈瘤の主な原因である“逆流防止弁の機能不全”を直接治療しているわけではないので、靴下を脱いでしまうと、元通りの下肢静脈瘤の状態になってしまいます。
この圧迫療法の正しい認識としては、弾性ストッキングを着用することにより、できるだけ足に血液を溜めないようにし、下肢静脈瘤の進行を予防する、または、すでに手術を受けた方では、術後の足の痛みや静脈瘤の再発を予防する手段とした方がよいでしょう。 - 弾性ストッキング着用による合併症はほとんどありませんが、ストッキングによる痒みやかぶれが時々生じることがあります。
これらの症状は、ストッキングの履き方を工夫したり、軟膏薬を塗るなどで改善することがほとんどです。 -
当クリニックにおける診察治療の流れ
- 当クリニックの下肢静脈瘤治療は、全て日帰り治療となっています。
- 最も患者様の負担が軽く、確実性の高い治療である血管内焼灼術と接着剤による血管内治療をメインとし、他の治療方法も加えて、患者様個人に合わせた最も効果的な治療をおこなっています。
① 初診・問診

- 診察は、午後の時間帯に行います。
- まずは肉眼的所見と自覚症状を確認し、下肢静脈瘤の疑いがあるかどうかを判断します。
② 下肢超音波検査

- 下肢超音波検査を行い、下肢静脈瘤の有無を確認します。
- 検査時間は、10~15分ほどで、検査に伴う苦痛は全くありません検査終了後、その所見を踏まえて詳しく病状説明を行います。
③ 採血・治療予定の確認

- 診断の結果、治療が必要な下肢静脈瘤と判断した場合、より安全に治療を行うために術前の採血検査等を行います。
- 当クリニックの場合は、最短で初診日から2日後に治療ができますが、下肢静脈瘤は決して手遅れになる疾患ではないので、患者様の都合をしっかりと検討し、治療日を決定します。
④ 治療

- 治療予定時間の30~40分ほど前に来院していただき、治療前の説明やお着替えを行っていただきます。
- 準備が整いましたら治療室に移動し、治療開始となります。
当クリニックでは血管内焼灼術や接着剤による血管内治療をメインとし、さらに表在静脈瘤切除術、硬化療法を駆使して治療を行います。 - 全ての治療は足の表面だけの局所麻酔で行うため、患者様は治療中もお話ができます。
- 治療中は、できるだけ不安を与えないよう、スタッフが声掛けしたり、手を握っていたりします。
- どうしても不安が強いという方には、局所麻酔に加えて静脈麻酔を行うこともあります。
- 治療終了後は弾性ストッキングを着用(接着剤による血管内治療では不要)し、休憩室にて10分ほど休憩していただき、異常のないことを確認して、ご会計、ご帰宅となります。
- 全ての工程を含めても、クリニック滞在時間は1.5~2時間ほどです。
⑤ 治療後診察
- 当クリニックでは、治療後3日以内に最初の診察を行います。
- そこで大きな異常がなければ、次回の診察は1ヶ月後、6ヶ月後になります。
- 治療から6ヶ月を過ぎた患者様も、必要と判断した場合は定期的な経過観察受診をしていただきます。
- 治療後(接着剤による血管内治療を除く)、最初の2週間は、術後合併症予防のため起床時から就寝時まで弾性ストッキングを着用していただきます。
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- (弾性ストッキングについて)
- 弾性ストッキングには様々な種類があります。
- つま先がないタイプや、膝下までのハイソックスタイプ、また、滑り止めがついているタイプなどもあります。
- 素材による履き心地もいくつかありますので、患者様に合ったタイプをその都度詳しくご説明させていただいております。
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- また、弾性ストッキングは、普通の靴下とは異なり履き方に工夫が必要となります。
- 当クリニックでは、弾性ストッキングの専門指導を受けた弾性ストッキングコンダクターが常時在中しており、責任をもって弾性ストッキングの履き方を含めた様々なご案内をさせていただいております。
下肢静脈瘤の治療費用について
治療内容 | 3割負担 | 2割負担 | 1割負担 |
---|---|---|---|
初診 (初診料+超音波検査) | 約2,800円 | 約1,900円 | 約950円 |
初診 (初診料+超音波検査+手術前血液検査) | 約6,000円 | 約4,000円 | 約2,000円 |
硬化療法 (片足) | 約6,000円 | 約4,000円 | 約2,000円 |
硬化療法 (両足) | 約11,500円 | 約7,500円 | 約3,700円 |
血管内焼灼術 (片足) | 約35,000円 | 約24,000円18,000円 (月の上限額) | 約12,000円18,000円 (月の上限額) |
血管内焼灼術 (両足) | 約70,000円 | 約48,000円18,000円 (月の上限額) | 約24,000円18,000円 (月の上限額) |
血管内塞栓術 (片足) | 約45,000円 | 約30,000円18,000円 (月の上限額) | 約15,000円18,000円 (月の上限額) |
血管内塞栓術 (両足) | 約89,000円 | 約59,000円18,000円 (月の上限額) | 約29,500円18,000円 (月の上限額) |
高位結紮 (片足) | 約10,500円 | 約6,800円 | 約3,500円 |
高位結紮 (両足) | 約20,000円 | 約13,500円 | 約6,600円 |
高位結紮 (片足) | 約10,500円 | 約6,800円 | 約3,500円 |
高位結紮 (両足) | 約20,000円 | 約13,500円 | 約6,600円 |
創傷処理 (片足) 範囲により | 約4,600円〜8,000円 | 約3,100円〜5,500円 | 約1,600円〜2,700円 |
創傷処理 (両足) 範囲により | 約8,500円〜16,000円 | 約5,600円〜11,000円 | 約2,800円〜5,500円 |
- 標準的な治療を行った場合のおおよその自己負担額となります。
- 治療法によっては、上記の金額に、医療用弾性ストッキング(約5,000円~)等の費用が別途かかります。
- 他保険会社の医療保険をご利用いただくと、治療費をさらに低く抑えることができますので、詳細はスタッフにお尋ねください。
下肢静脈瘤の予防法
下肢静脈瘤は、必要以上に足に血液がたまる状態が続いてしまい、やがて足の静脈内にある“逆流防止弁の機能不全”が生じることで発症することが多いとされます。
したがって、できるだけ足に血液が溜まらないようにすることが、下肢静脈瘤の予防法の第一歩となります。
- ① 長時間の立位または座位をさける
- ② 就寝時の足上げ
- ③ 弾性ストッキングの着用
- ④ 適度な運動
- ⑤ 規則正しい食生活
- ⑥ こまめな水分補給
- ⑦ 足のマッサージ
- ⑧ 当クリニックお勧め、下肢静脈瘤予防体操!!
① 長時間の立位または座位をさける

- 長時間の立位や座位では、足が動かない時間がどんどん長くなるにつれて、足の筋肉が動かない時間が増えることになります。
- そうなると、足の静脈内の血液は足の筋肉が収縮することで流れやすくなっているので、その収縮が起こらなくなり、足に血液がどんどん溜まり、やがて下肢静脈瘤となっていきます。
- できるだけ足が動かない時間を短くすることが非常に大切なので、時々つま先立ちをしたり、座り仕事の方でも、膝から下をぶらぶらと動かすといった足の運動が大切です。
② 就寝時の足上げ

- 普段寝ている姿勢の時は、足の血液の流れに対して重力が垂直方向に加わるため、重力が血液の流れを妨げることが少なくなります。したがって、たいていの人は、朝起きた時には、足の浮腫みが改善していることが多いです。
- そこで、就寝時に足を心臓の高さより少し高めに保ち(座布団1枚分でも構いません)、より足の血液がよりスムーズに流れやすい状態を作ることで、足に血液が溜まりにくくなり、下肢静脈瘤の予防につながります。
③ 弾性ストッキングの着用

- 弾性ストッキングは、下肢静脈瘤の予防または、進行予防に効果的です。
- 普段からストッキングを着用することで、外側から直接足を圧迫し、余計な血液が溜まることを防ぎます。
- 特に立ち仕事や座り仕事に従事されている方では、ストキングの着用で足が軽くなり、より快適に過ごせるようになります。
- まれに、弾性ストッキングが肌に合わずに、痒みや肌荒れを生じる場合もありますが、着用時間を短くしたり、ストッキングのすべり止めの部分が直接肌に触れないようにするなどの工夫をすることで改善します。
- また、長時間乗り物に乗る時などには、弾性ストッキングの着用をぜひお勧めします。
- これは、深部静脈血栓症という肺梗塞(エコノミークラス症候群)の原因である血栓症の予防になるからです。
- 特に、出張などで長時間飛行機などに乗る時には、弾性ストッキングを着用しましょう。
④ 適度な運動

- 年齢を重ねていくと、男女問わず筋肉量が低下していきます。
- 足の筋肉量が低下していくと、足の筋肉の収縮作用(筋ポンプ作用)が低下し、やがて足の静脈内の血液の流れが常に悪い状態になって下肢静脈瘤の原因となります。
筋肉量は、普段から維持できるように意識することが大切で、その為の定期的な運動が必要となります。
歩く距離を長くしたり、プールやジムに通ってトレーニングするのもよいでしょう。 - 大切なことは、負荷の大きな運動を時々行うよりも、負荷の小さな運動でもいいので、その運動を定期的に行うということです。
⑤ 規則正しい食生活

- 下肢静脈瘤を予防してくれる食物はありませんが、下肢静脈瘤予防にも、他の疾患と同様、規則正しい食生活を行って、肥満や高脂血症といった生活習慣病を防ぐことが大切です。
- 特に塩分などを取りすぎてしまうと、余計な水分が体内に溜まりやすくなり、浮腫みの原因となります。
⑥ こまめな水分補給

- 体内の水分が少なくなると、血液がドロドロなり、血栓ができやすい状態になります。
- 血栓ができてしまうと、下肢静脈瘤のある方では静脈炎などを起こしやすくなるので、注意が必要です。
- 血液の流れをスムーズにするには、水分補給が重要であり、一度に大量の水分をとるよりは、こまめに摂取する方が理想的です。また、水分といっても、アルコールやカフェイン飲料(コーヒーや紅茶、一部のお茶など)は、飲みすぎると尿量が増える原因となり、逆に体内の水分が必要以上に損なわれることがあるので、注意しましょう。
⑦ 足のマッサージ

- 浮腫みの改善には、下肢のマッサージも効果的です。
- 足の一部をマッサージするのではなく、全体的に下から上にかけて行うことをイメージするとよいでしょう。
- ただし、痛みを伴う場合は、無理にはマッサージを行わず、医療機関にて診断を受けましょう。
⑧ 当クリニックお勧め、下肢静脈瘤予防体操!!
足の筋肉をほぐして筋ポンプ作用を増大させ、下肢静脈瘤を予防しましょう!!
足の指グーパー体操!

- 座った状態で、足の指をグーパーと繰り返します
- イメージ的には、足の指で布をつかむような感じです。
- 1回の運動につき10回ほどグーパーを繰り返します。
この運動を1セットとし、1日5セットほどを目標に行ってみましょう。 - お仕事中でもできる簡単な方法なので、適宜行うと良いでしょう。
バレリーナの足体操!

- 座った状態で、足首の関節の曲げ伸ばしを繰り返します。
- イメージ的には、足の指を脛に近づけるように足首を曲げ、今度は反対に足の指が脛から離れるように足首を伸ばします(バレリーナの足の動きです)。
- 1回の運動につき10回ほど繰り返します。
この運動を1セットとし、1日5セットほどを目標に行ってみましょう。 - お仕事中でもできる簡単な方法なので、適宜行うと良いでしょう。
つま先立ち体操!

- 立ち仕事の方は、時々つま先立ちを行いましょう。
寝る前の手足ブラブラ体操!

- 仰向けになり、手足を天井に向けて伸ばします。
- その状態で手足をブラブラと動かします。
こうすることで、重力の助けを得て手足の血液が心臓に戻りやすくなります。 - 少しでも手足が心臓より高くなっていれば効果が期待できますので、無理のない姿勢の範囲で行いましょう。
浮腫みとは??

- 浮腫みは、皮膚の下に余分な水分(組織間液やリンパ液など)が溜まった状態です。
- 人間は、心臓から酸素や栄養をたっぷりと含んだ血液が全身に流れていき、いろんな組織でそれらが消費され、再び心臓に血液が戻ってきます。
- その血液が戻る際に通る通り道が静脈と呼ばれる血管なのですが、静脈には、血液を心臓に戻すときに、皮膚の下にたまった余分な水分も吸収して、一緒に運ぶ役割もあります。
- 静脈の水分を吸収する機能が、何らかの原因で低下したときに浮腫みが生じてきます。
また、リンパ管内のリンパの流れが障害されたときにも、浮腫みが生じます。
浮腫みの原因
全身疾患
心臓病や腎臓病、肝臓病、甲状腺の疾患などがある場合、浮腫みが生じてくることがあります。
これは、全身の血液の巡りが悪くなることや、体の水分の吸収機構が障害されることによります。
下肢静脈瘤
下肢静脈瘤がある場合、下肢の静脈の血流が悪化するので、心臓に血液が戻りにくくなり、その結果、足に血液が溜まると同時に余分な水分もどんどん溜まっていき、下肢の浮腫みが生じます。
外科手術後
腹部の手術や婦人科系の手術、整形外科での下肢の手術後に浮腫みが生じることがあります。これは、手術時のリンパ節の摘出や、術中のリンパ管の損傷により、リンパの流れが障害されて生じる浮腫みで、術後しばらくしてから徐々に生じてくることがあります。
生活習慣
立ちっぱなしの仕事や運動をする習慣がない人では、浮腫が生じやすくなります。
これは、足が動かない時間が長くなると、静脈内の血流が悪くなり、皮下の水分が上手く吸収されなくなって浮腫みが生じます。
この場合は、ほとんどが生理的な一過性のものなので、生活習慣の改善で浮腫みの改善が見込めます。
その他の原因
アルコールや塩分のとりすぎなどの食生活が原因となったり、内服薬の種類によっては、副作用としての浮腫みが出ることがあります。
浮腫みの治療
- 生活習慣や、食生活が原因となっている浮腫みの場合は、まずは、それらの改善が必要です。
- 全身疾患による浮腫みの場合は、基礎疾患の治療が必要です。
- 下肢静脈瘤が原因の場合は、静脈瘤を治療することによって、浮腫みが著明に改善することがあります。
- 弾性着衣の着用
生活習慣や、食生活が原因となっている浮腫みの場合は、まずは、それらの改善が必要です。
(同じ姿勢が続かないようにする工夫)
立ち仕事やデスクワークでは、時々、つま先立ちをしたり、椅子に座っている時でも膝から下をブラブラと動かしたりします。
歩行やランニングといった、定期的に足を動かす習慣が大切です。
(食生活の改善)
塩分や、アルコールの取りすぎには注意しましょう。
水分も血液の流れをスムーズにするためにはある程度必要なので、適度に水分補給もしましょう。
この時に、カフェインの入った水分では、カフェインによる脱水作用により上手く水分補給ができないことがあるので、カフェインの入っていない水分も適度にとるようにしましょう。
全身疾患による浮腫みの場合は、基礎疾患の治療が必要です。
特に体全身に浮腫みが生じる場合は、何らかの内臓疾患が隠れていることもありますので、 早めの診察を心がけましょう。
下肢静脈瘤が原因の場合は、静脈瘤を治療することによって、浮腫みが著明に改善することがあります。
弾性着衣の着用
弾性ストッキングを日中に適宜着用することで、強制的に足の浮腫みを抑え込みます。
弾性ストッキングは特殊な作りの着衣なので、履き慣れるのに少し時間がかかりますが、慣れてしまえば、足が非常に軽くなり、特に立ち仕事の方にはお勧めです。