下肢静脈瘤の原因や症状、治療・手術法は?費用や術後の痛みについても解説します!

下肢(太もも、ふくらはぎ、すねなど)に、血管が瘤(こぶ)のように膨れていたり、浮き出て見えるようなことはありませんか?それは、おそらく『下肢静脈瘤』という足の血管の病気です。

下肢静脈瘤は最近の医学の進歩により、比較的容易に治療が出来るようになりました。
この記事では、下肢静脈瘤の原因や症状、治療や手術について解説します。費用についてや手術のあとに痛みがでるのか、どんなことに気をつけるとよいかなど、治療や手術を受けるにあたって気になるポイントもご紹介します。

下肢静脈瘤が気になる方は、ぜひ参考にしてください。

監修者情報

記事監修者 さかえ血管外科・循環器クリニック 院長 平本明徳
さかえ血管外科・循環器クリニック
院長 平本 明徳

大学卒業後は、関東エリアを中心として心臓血管外科医として治療経験を積み、前任地では下肢静脈瘤の治療の専門としてこれまでに7,000例以上の治療実績を持ちます。2020年にさかえ血管外科・循環器クリニックを開業し、「人生を楽しむための下肢静脈瘤治療」をテーマに下肢静脈瘤治療を中心に日帰り外科治療を行なっています。

【資格】
・日本外科学会認定 外科専門医
・日本脈管学会認定 脈管専門医
・日本脈管学会認定 研修指導医
・心臓血管外科専門医(2015~2019)
・下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医
・弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター

目次

  1. そもそも下肢静脈瘤ってどんな病気?
  2. 下肢静脈瘤は自然に治ることはない
  3. 下肢静脈瘤を放置するとどうなる?
  4. まとめ

下肢静脈瘤ってどんな病気?

下肢静脈瘤ってどんな病気?

下肢静脈瘤とは、下肢の静脈の弁が壊れて血液が逆流することで生じる疾患で、足の静脈がコブのようにふくらみ変形する病気です。
足の血液循環が悪くなってうっ滞を起こすので、足のむくみや怠さ、こむら返り、色素沈着や皮膚の潰瘍などの症状が出てきます。
たくさんの種類があり、主に女性がなりやすいと言われています。40歳以上の女性に多く年齢とともに増加していきます。

日本人では15歳以上の男女の43%、30歳以上では62%もの人に静脈瘤が認められたとの報告もあります[※1]。
40歳以上を対象とした調査[※2]では、全体で8.6%(男性3.8%、女性11.3%)に認められ、患者数は1000万人以上と推定されます。

また、出産経験のある女性の2人に1人、約半数の方が発症するというデータ[※3]もあり、下肢静脈瘤はまだまだ認知はされていませんが、実は身近な病気なのです。
つまり、日本人の約9%に下肢静脈瘤があり、患者数は1,000万人以上で、 出産経験のある成人女性の2人に1人が発症することになります。

表:年代別下肢静脈瘤の割合※1

年齢下肢静脈瘤の割合
15歳〜29歳13%
30歳〜49歳55%
50歳〜69歳61%
79歳以上75%
全体43%

※1 平井正文,久保田仁,川村陽一他 脈管学 28: 415-420, 1989
※2 小西ら 2005年 西予地区コホート研究(愛媛県西部の1市5町の40歳以上の住民を対象として愛媛大学公衆衛生学教室 小西正光教授によって2002年から勧められている調査)脳卒中および心筋梗塞既往者を除外した9,123人(男性3,302人、女性5,821人、平均年齢62.4歳)における「下肢表面が盛り上がって蛇行している血管で、かつ起立すると目立つもの」と定義された静脈瘤(表在性静脈瘤:伏在、側枝、網目の一部と考えられる)の出現頻度です。
※3 平井正文,牧篤彦,早川直和:妊娠と静脈瘤 静脈学:255-261, 1997

下肢静脈瘤とは

体のすみずみに行きわたった血液が、心臓に戻る血管を静脈といい、足の静脈が太くなって瘤(こぶ)状に浮き出て見えるようになった状態を下肢静脈瘤といいます。

下肢静脈瘤の症状は、血液の逆流により足に血液が溜ることによって生じるもので、一日のうちでも午後から夕方にかけて症状が強くなるのが特徴です。足がむくんだり、だるいといった症状が、発症のサインです。

下肢静脈瘤は多くの方に発症する疾患で、重篤な血栓症が発生しなければ基本的には命に係わらない疾患ですが、下肢静脈瘤が原因で生じる怠さ、こむら返り、痒み、痛み、そして肉眼的ストレスに深く悩む患者さんの治癒を望む声は切実で、その苦痛は小さくありません。
同様な足の症状は変形性膝関節症や脊柱管狭窄症など他の病気でも起こります。気になる方は、医師に相談してみてください。

下肢静脈瘤の症状

  • 足の血管が浮き出て見える
  • ふくらはぎがだるい
  • 足のむくみ
  • 足のこむら返り(つり)
  • 足がほてる・熱く感じる
  • 足のむずむず感・不快感
  • 足のかゆみ・湿疹
  • 足の色素沈着
  • 足の潰瘍

下肢静脈瘤の種類

下肢静脈瘤は、大きく分けて伏在型(ふくざいがた)・側枝型(そくしがた)・網目状くもの巣状の4種類に分類されます。

1.伏在静脈瘤
2.側枝静脈瘤
3.網目状静脈瘤
4.クモの巣状静脈瘤

一般的に、自覚症状があり外科的な治療が必要になるのは伏在型静脈瘤が多く、他の3種類は自覚症状は軽症なことが多いです。それぞれの特徴を解説します。

1.伏在静脈瘤

伏在型静脈瘤は、表在静脈で最も太い伏在静脈の弁不全によっておこる静脈瘤です。大伏在静脈瘤小伏在静脈瘤の2種類があります。
ボコボコと大きい静脈瘤が目立ったり、足のだるさやむくみなどの症状がおこり、重症化して外科的な治療が必要になることがあります。

足の内側やふくらはぎの表面に太い血管がボコボコと目立ってきたり、また、足のむくみやだるさ痒み、こむら返りが頻回に生じたりといった自覚症状が強く表れやすい静脈瘤です。
約8割がこのタイプの静脈瘤とされています。
大伏在静脈瘤は最も多いタイプで、足のつけ根の大伏在静脈の静脈弁が壊れて生じ、太ももから膝の内側に静脈瘤が目立ちます。小伏在静脈瘤は、膝の後ろ側の小伏在静脈の静脈弁が壊れておこり、脹ら脛に静脈瘤が目立ちます。

2.側枝静脈瘤

伏在静脈瘤に繋がる枝分かれした先の静脈が拡張してきたものです。下腿にできやすい静脈瘤です。

3.網目状静脈瘤

皮膚の直下にある細い静脈に生じる静脈瘤で、太さは約2~3mmのものがほとんどです。
比較的鮮明な青色となります。伏在静脈瘤のようにむくみやだるさなどの自覚症状を伴うことは少ないですが、皮膚を透かして目立つようになり、主に美容的な不快感を訴える方が多いです。
その見え方から網目状静脈瘤と呼ばれ、膝裏などによく見られます。

4.クモの巣状静脈瘤

皮膚の直下にある細い静脈に生じる静脈瘤で、皮膚の表面(表皮)の下の、径0.1〜1.0mmの極めて細い血管が拡張したものです。盛り上がりが少なく、赤紫色になります。
クモの巣のように赤紫色の非常に細い血管が、皮膚を透かして見えるようになり、美容的な不快を訴える方が多いです
太ももや脹ら脛、膝裏などに生じることが多いです。

下肢静脈瘤の原因

立ち仕事・デスクワーク、肥満、加齢、女性、妊娠出産、など、いずれも脚の静脈が圧迫されるといった静脈弁への負荷が中長期的に続くことが要因と考えられています。
また、先天的に静脈や弁の機能不全がみられたり、脚の血流が滞りやすい体質をもっているなど遺伝によって発症するケースもあります。

足の静脈には、重力に逆らって血液を下から上と流していくための「逆流防止弁」という特殊な構造があります。これは上がった血液が重力に負けて落ちてこないようにするための扉のようなもので、適切なタイミングでこの扉が開閉することで、血液の流れを下から上の一方通行に保っています。
下肢静脈瘤になると、この扉の開閉がうまくいかなくなってしまいます(逆流防止弁の機能不全)。
これにより、せっかく上がった血液が重力に負け、下に落ちてしまうようになります。

下肢静脈瘤になりやすい人の特徴

下肢静脈瘤は男女問わず起こる疾患ですが、男性より女性に多く見られます。(男性の約2〜3倍と言われています)。特に女性の場合、妊娠すると腹圧が高くなり、下肢からの血液の流れが障害され、下肢の静脈の圧力が高くなってしまいます。
その結果、逆流防止弁に負担がかかり弁機能が崩壊して下肢静脈瘤を発症することがあります。

また、下肢静脈瘤は長時間の立ち仕事(美容師、調理師、販売員など)に従事する方にも多く、年齢とともに進行しやすくなります。
1日10時間以上立っている人は重症化しやすい傾向にあるので注意が必要です。
高血圧、糖尿病の方なども注意が必要です。また、遺伝的関与もあり、家族や親戚に静脈瘤のある方に起こりやすいと言われています。また、肥満や便秘なども下肢静脈瘤を悪化させる因子となります。

下肢静脈瘤になりやすい人は以下の通りです。その理由や特徴をくわしく説明します。

① 男性よりも女性のほうが多い
② 妊娠、出産の経験がある方
③ 立ち仕事や座り仕事の方
④ 高齢者の方
⑤ 遺伝
⑥ 生活習慣

① 男性よりも女性のほうが多い

一般的には、男性よりも女性のほうが約2倍、下肢静脈瘤になりやすいと考えられています。
女性は男性に比べて足の筋肉量が少ないことが多く、そのため足の筋肉のポンプ機能が低下しやすくなり、足の静脈に血液が溜まりやすくなるためです。
また、ホルモンバランスの影響で血管そのものが弱くなりやすいことも一因とされています。

② 妊娠、出産の経験がある方

妊娠経過中の女性は、子宮が大きくなるにつれて、おなかの中で静脈が圧迫されやすくなります。これにより、おなかの中の静脈につながる足の静脈の圧力が上昇しやすくなります。
また出産時の力みなどが原因で逆流防止弁が壊れてしまうこともあります。
なお第2子以降の妊娠・出産では、より下肢静脈瘤になりやすいとされています。

③ 立ち仕事や座り仕事の方

仕事内容によっては、立ちっぱなし、座りっぱなしの状態が長く続くことがあります。このような「足が動かない姿勢」が続くことは、足の筋肉のポンプ作用が機能しにくくなり、静脈内の圧力を高める要因となりえます。
調理師さんや美容師さんなど立ち仕事の方座ったまま動かない姿勢が続くデスクワークの方に下肢静脈瘤が生じやすい理由の一つと考えられています。
また1日のうち10時間ほど動かない、もしくは動いてもほんの僅か、という状態が続いている方は、下肢静脈瘤になるリスクが高いとされています。

④ 高齢者の方

年齢を重ねるにつれて、男女を問わず運動量が低下していきます。
すると足の筋肉量も低下していき、足の筋肉のポンプ作用が機能しにくくなり、静脈内に血液が溜まりやすくなります。
また、加齢とともに逆流防止弁そのものが弱くなっていくこともあり、これも下肢静脈瘤の一因となります。

⑤ 遺伝

身内の方に下肢静脈瘤の人がいる場合、その血縁者に下肢静脈瘤が遺伝するということがあります。
これは遺伝的に逆流防止弁が弱くなっていることが考えられ、両親が下肢静脈瘤だった場合は、そのお子さん達には9割ほどの確率で遺伝するというデータもあります。

⑥ 生活習慣

一般的に、喫煙や高血圧、高コレステロール血症といった、主に動脈性の疾患に影響を与える因子は、静脈にも影響があるとされています。
また、便秘症や肥満症、日常的な運動不足なども、静脈内の圧力が上昇する原因となり、下肢静脈瘤のリスクが上昇します。

下肢静脈瘤の症状と治療適応

下肢静脈瘤の症状と治療適応

下肢静脈瘤には多くのいろいろな症状があります。どのような症状が出るかは人によって違います。だるい、重い、痛い、疲れやすい、浮腫む、足がつるといった症状が多く、冷える、火照るといった症状が出る場合もあります。
そして、進行すると皮膚のかゆみや皮膚硬結(皮膚が硬くなること)、湿疹などが出てきて、最終的には皮膚が黒くなり潰瘍ができてボロボロになってしまいます

下肢静脈瘤では、静脈瘤内に出来た血栓が血流に乗って脳梗塞や心筋梗塞を生じたり、足を切断することになることはほとんどありません。

治療の適応となる場合は、次の3つです。

  1. うっ滞性皮膚炎がおこっている場合
  2. 静脈瘤による症状があってつらい場合
  3. 本人が外見が気になる場合

高齢の方で症状がなく、見た目が気にならない場合は保存的治療を含めて治療は必要ありません。症状があるなど、気になる場合には専門の医療機関を受診しましょう。
下肢静脈瘤を診療するのは、主に血管外科です。最近では下肢静脈瘤を専門に扱うクリニックも増えています。

下肢静脈瘤の治療方法

下肢静脈瘤の治療方法

下肢静脈瘤の治療方法は主に保存的治療積極的な治療があり、積極的な治療法としては、次の3つがあります。

  1. 血管内治療(血管内焼灼術、血管内塞栓術)
  2. 外科手術(ストリッピング手術、高位結紮術)
  3. 硬化療法

また下肢静脈瘤の種類による主な治療法は以下のようになります。

タイプ静脈の太さ主な治療
伏在型≧4mm血管内治療・ストリッピング手術・高位結紮
即枝型3〜4mm硬化療法
網目状1〜2mm硬化療法
くもの巣状≦1mm硬化療法

保存的治療

下肢静脈瘤の保存的治療には、下肢の症状をやわらげたり軽症例の進行を予防するために弾性(着圧)ストッキングを着用したり、運動やマッサージなどを取り入れて生活習慣を改善する方法がありますが、他の治療と異なり根本的な治療ではありません。

弾性ストッキング・着圧ストッキングを使う

足を圧迫するストッキングには、着圧ストッキングと呼ばれる医療機器ではないものと、弾性ストッキングと呼ばれる医療用があります。

着圧ストッキングと医療用の弾性ストッキングとでは、構造は似ているものの違う点があります。

着圧ストッキング非医療機器):誰でも普段使いできる

着圧ストッキングとは足を快適にサポートする目的のもので、ドラッグストアやインターネット通販で自由に購入できます。立ち仕事やデスクワーク、昼間の外出など、日常使いとして着圧ストッキングを使う人は少なくありません。

「美脚に見える」と美容目的で購入する人も多く、着圧ストッキングの人気はますます高まっています。

弾性ストッキング医療機器):医師の指示により使用する

弾性ストッキングは医療機器の一つで、圧迫力は市販のものよりも高く設定されていて、編み方も特殊です。そのため、基本的には医師の指示によって使用します。病気や妊娠によるむくみ改善のほか、血流・血行の促進などに使われます。

これらのストッキングによる合併症はほとんどありませんが、ストッキングによる痒みやかぶれが時々生じることがあります。

これらの症状は、ストッキングの履き方を工夫したり、軟膏薬を塗るなどで改善することがほとんどです。

運動・マッサージなどによる生活習慣の改善

下肢静脈瘤は、静脈弁が壊れて血液が重力に逆らって心臓にうまく戻らなくなる病気です。したがって、長い時間立っていると症状が強くなり、病気が進行しやすくなります。
同じ場所に長時間じっと立っているのは避け、できるだけ歩き回ったり、1時間に1回程度は休憩をとるようにしましょう。パソコンなどの作業で、椅子に長時間座ったままもよくありませんので、足首の運動をしたり、足台で足を高くするようにしましょう。お風呂で足のマッサージをしたり、就寝時に足を高くするのも効果的です。

足のむくみを改善する運動・マッサージ(足の静脈の血流を促す)

ーつま先を上げ下げする
ー両足をあげてブラブラさせる
ーふくらはぎあたりを上方向に(心臓に向けて)さするようにマッサージする
*ただし、ボコボコしている部位を直接マッサージすると血栓症が生じる恐れがあるので控えましょう
ー立ち仕事の人は1~2時間ごとに休憩する
ー毎日歩く習慣を持つ
ー脚を上げて休む
ー足先を楽な形で上げて寝る

手術などによる積極的な治療

積極的に血液の逆流を止める治療としては以下のような方法があります。
各治療法について解説します。

  • 血管内治療(血管内焼灼術、血管内塞栓術)
  • 外科手術(ストリッピング術・高位結紮術)
  • 硬化療法による治療

血管内治療(血管内焼灼術・血管内塞栓術)

血管内焼灼術は、針穴から静脈内にカテーテルを挿入する手術で、熱を加えて拡張した血管を閉塞させる方法です。主に伏在静脈系で施行される術式です。大きな傷が残らず、局所麻酔で施術が可能で、痛みが少なく、体の負担が少ないという術式です。手術は片足約15〜20分で終わりすぐに歩けます。

血管内焼灼治療には、レーザーを使うレーザー治療と高周波(ラジオ波)を使う高周波治療とがあります。ともに保険適用されています。

血管内塞栓術は、血管内焼灼術に代わる次世代の治療法として2019年12月に日本でも保険治療として認められた手術で、主に伏在静脈系で施行される術式です。カテーテルを静脈の中に挿入し、内側から接着剤を注入して血管を塞ぐ手術です。大きな傷が残らず、局所麻酔で施術が可能で、痛みが少なく、体の負担が少ないという手術時間です。手術は片足約15〜20分で終わりすぐに歩けます。欧米諸国ではすでに広く行われている治療法で、治療成績も良好です。

外科手術

ストリッピング手術は下肢静脈瘤の根治的な治療法として1900年代初頭より行われている最も標準的な手術で、足のつけ根と膝の内側の2ヶ所を1~3cmほど切って、静脈の中に細い針金(ワイヤー)を入れてワイヤーごと静脈を抜き去る方法です。全身麻酔や脊椎麻酔で行われるため入院が必要でしたが、最近は日帰りでできる医療施設もあります。病気のある血管を全て取り除いてしまうため、高い治療効果が期待できます。しかし、血管内治療に比べて傷口が広く体への負担が大きいため、回復までに時間がかかったり、手術後の「痛み」や「出血」などのリスクがあるとされています。
高位結紮術は足のつけ根で血管をしばって、血液の逆流を食い止める手術です。新しい治療法の開発にともない、現在では実施件数は少なくなっています。高位結紮術は局所麻酔でできますが再発が多く術後の傷も大きいため最近ではあまり行われなくなっています。

硬化療法による治療

注射で静脈内に硬化剤を投与する治療法です。

硬化療法は硬化剤(ポリドカスクレロール)といわれている薬剤を静脈瘤の中に注入して、静脈の内膜に炎症を起こさせ、その上で皮膚の上から圧迫して患部の静脈を閉塞させ、静脈瘤を消失させる治療法です。1回の施行時間は10分〜15分で、外来通院で施行可能ですので、入院の必要はありません。また、手術のように切るわけではありませんので傷は残りません。すべての方を硬化療法だけで静脈瘤を治療できるわけではありません。また、場合によってはしこり(血栓形成)や静脈炎、色素沈着などの合併症を起こすこともありますので、手術やレーザー治療の補助的なものと考えていただいたほうがよいかもしれません。

下肢静脈瘤のおもな治療法

治療法保険適用治療費(片足)治療に適した静脈瘤のタイプ
保存的治療3000〜5000円
(弾性ストッキングの場合)
軽症例・手術後の再発防止
硬化療法約6,000円くもの巣状・網目状・側枝型
ストリッピング手術30,000~35,000円伏在型
血管内治療
(血管内焼灼術、血管内塞栓術)
35,000~45,000円伏在型
グルー治療約45,000円伏在型
※3割負担の場合の自己負担額の目安です。(日帰り治療の場合・医療機関によって異なります。

下肢静脈瘤の治療に関するQ&A

下肢静脈瘤の治療に関するQ&A

Q.下肢静脈瘤の手術に入院は必要ですか?

A.基本的には、下肢静脈瘤の手術は日帰り治療となります。

Q.手術や治療にかかる費用は?

A.手術費用として3割負担の場合、硬化療法で約5,000~6,000円、ストリッピング手術で約30,000〜35,000円、血管内焼灼術や血管内塞栓術などは35000〜45000円の自己負担が必要です。
上記費用に加えて、短期滞在管理加算等が必要となります。
詳しくは、医療機関までお尋ねください。

Q.術後はどのくらいで通常の生活ができますか?

A.ストリッピング術では、通常3日程度の入院が必要で、通常の生活に戻るには2週間~1ヶ月程度かかります。血管内焼灼術や血管内塞栓術では、基本的には日帰り手術で治療は30分~1時間程度で終了します。家事や事務仕事は当日から可能ですが、重労働や長時間の立ち仕事は2~3日後からになります。治療後の経過によりますが、約2週間でほぼ通常の生活に戻ることができます。

Q.手術中や術後に痛みはありますか?

A.血管内焼灼術の場合、極細の針を用いて局所麻酔の注射を2~3か所行いますが、この際に予防接種のようなチクチクした痛みがあります。その後、特殊な麻酔薬を注入していきます。この際も、個人差がありますが軽度の痛みが出る場合がありますが、薬が注入されるにつれて痛みも消失します。
実際にカテーテルで血管を焼灼している時には、ほとんど痛みはありません
血管内塞栓術の場合、極細の針を用いて局所麻酔の注射を1か所行いますが、この際に予防接種のようなチクチクした痛みがあります。その後、カテーテルを挿入し生体用の接着剤を注入していきますが、その際の痛みはほとんどありません。治療後は、麻酔の効果が切れるまで、約30分から1時間ほどかかります。麻酔の効果が切れても、強い痛みが出現することはほとんどありません。

Q.日常生活で気を付けることはありますか?

A.下肢静脈瘤は気づかないところで徐々に進行していく病気なので、さらなる病気の進行や悪化を防ぐために、日常生活の中では次の点に気をつけましょう。

適度な運動をしましょう。
バランスのとれた食事をとりましょう。
長時間の立ち仕事や座り作業の際には、定期的に軽い運動を行いましょう。
締め付けの強すぎる下着の着用は避けましょう。
弾性ストッキングを活用しましょう。

適度な運動をしましょう。
休日なども家の中でじっとしている生活ではなく、適度な運動を心がけましょう。体を動かすことで血流がよくなり、足の筋力を高めて下肢静脈瘤を予防します。

バランスのとれた食事をとりましょう。
塩分や油分の多い食事が多くなっていませんか?下肢静脈瘤の原因になりやすい、肥満や脂質異常を予防するために、バランスのとれた食生活を送ることが、血流改善や静脈への負担を軽くすることにつながります。

長時間の立ち仕事や座り作業の際には、定期的に軽い運動を行いましょう。
立っている時間の長い販売員などの職業の方、デスクワークや家の中でも椅子に座っている時間が長い人は、休み時間などに軽い運動をしたり、足を上げて休ませるなどして、こまめに足をいたわりましょう。

締め付けの強すぎる下着の着用は避けましょう。
スリムなボトムスなどに合わせて、窮屈なガードルなどの下着で体を締め付けると、下半身の血行が悪くなって下肢静脈瘤を悪化させます。
また、ハイヒールは歩く時に足のふくらはぎの筋肉がしっかり使えないために、血液の循環が悪くなりますので、ヒールの低い靴を履いてしっかりと歩く期間も取り入れましょう。

弾性ストッキングを活用しましょう。
弾性ストッキングは、足首からふくらはぎ、太ももまで段階的に圧迫することで血行を効果的に改善する医療用のストッキングです。
下肢静脈瘤の予防や悪化を防いだり、治療後のケア、さらにはむくみ対策にも役立ちます。
自分の足に合わせたサイズやタイプを選び、正しい履き方で着用するようにしましょう。

まとめ

まとめ_下肢静脈瘤の治療・手術

下肢静脈瘤は直接命に係わるような病気ではありません。従って、そのまま放置されるケースや、下肢静脈瘤による下肢の症状を年齢のせいと思い込んで、辛い症状をずっと我慢して下肢静脈瘤が進行してしまうことがあります。

下肢静脈瘤は、症状が進行する前に適切な治療を受けることで、快適な毎日を過ごせるようになります。
人生100年時代といわれる現代。
QOLを維持し、楽しい人生を送るためには健康な身体の維持が必須です。

その中でも、下肢の状態をしっかりと健康な状態に保ち、しっかりと動ける身体を維持することは、今後の人生をより良くすることに重要な役割を果たします。
今の下肢の症状が下肢静脈瘤による症状ならば、適切な時期に適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。

気になる方は、専門医療機関で一度相談してみましょう!

下肢静脈瘤の症例について

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