下肢静脈瘤のレーザー治療ってどんなの?血管内焼灼術についてメリット・デメリットを解説

下肢静脈瘤のレーザー治療ってどんなの?-血管内焼灼術についてメリット・デメリットを解説

下肢静脈瘤のレーザー治療の正式名称は「血管内焼灼術」といい、血管内焼灼術には「高周波カテーテル治療」も含まれます。
下肢静脈瘤の原因となる血液の逆流が起きている血管に対して、内側からレーザーによって焼灼することで、血管を塞ぐ治療方法です。

現在の下肢静脈瘤の治療法の中で最もスタンダードな治療法です。再発率の低さや、体への負担の少ない「低侵襲」な治療方法として評価されています。

この記事では、下肢静脈瘤のレーザー治療(血管内焼灼術)の治療内容やメリット・デメリットを他の治療法と比較しながら解説します。

監修者情報

記事監修者 さかえ血管外科・循環器クリニック 院長 平本明徳
さかえ血管外科・循環器クリニック
院長 平本 明徳

大学卒業後は、関東エリアを中心として心臓血管外科医として治療経験を積み、前任地では下肢静脈瘤の治療の専門としてこれまでに7,000例以上の治療実績を持ちます。2020年にさかえ血管外科・循環器クリニックを開業し、「人生を楽しむための下肢静脈瘤治療」をテーマに下肢静脈瘤治療を中心に日帰り外科治療を行なっています。

【資格】
・日本外科学会認定 外科専門医
・日本脈管学会認定 脈管専門医
・日本脈管学会認定 研修指導医
・心臓血管外科専門医(2015~2019)
・下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医
・弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター

目次

  1. 下肢静脈瘤とは
  2. レーザー治療(血管内焼灼術)について
  3. レーザー治療(血管内焼灼術)のメリット・デメリット
  4. 他の治療方法との比較
  5. 治療費用
  6. まとめ

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤とは、足の静脈内で発生した血液の逆流により、下肢の倦怠感や浮腫、下肢の表面の静脈の血管が膨らんだりする病気です。
下肢静脈瘤は良性の病気であるので、放置することで下肢の切断や命の危険に晒されることはありませんが、血管が浮き出ることによる見た目の問題や、足の疲れやだるさ等の症状を伴い、生活に支障をきたすようになります。
下肢静脈瘤は自然に治ることはありません。症状を改善するには下肢静脈瘤治療に対応した血管外科の受診をおすすめします。

レーザー治療(血管内焼灼術)について

レーザー治療(血管内焼灼術)

レーザー治療(血管内焼灼術)とは、静脈内にカテーテルを挿入し、内側からレーザーを照射して血管を焼いて塞ぐ方法です。

従来のストリッピング手術(伏在静脈抜去術)とは異なり、静脈瘤の原因となっている血管の摘出が必要なく、カテーテルを挿入する小さな創口のみで治療が可能です。

そのため、体への負担の少ない「低侵襲」な手術で、術後の創口もほとんど目立たないため、審美的な側面でも優れているバランス性の高い治療方法です。

レーザー治療(血管内焼灼術)の流れ

  1. カテーテル(細長い管)を挿入する部位に少量の局所麻酔を行います。
  2. 「太ももの内側」または「ふくらはぎ」からカテーテルを伏在静脈の中に挿入します。
  3. 挿入したカテーテルの先端から、高周波やレーザー光を発生させて血管を内部から焼き、血管全体を閉塞させます。
  4. カテーテルを抜き、閉塞を確認します。
  5. 止血を行なった後、手術終了です。手術時間は片足につき約5~10分です。

焼いた血管は摘出しなくても良い?足の血液循環への影響は?

従来のストリッピング手術(伏在静脈抜去術)は血管の摘出が必要になりますが、レーザーによって焼灼した血管は約3~6カ月ほどかけて徐々に体内に吸収されるので、摘出の必要はありません。

また、焼灼した血管には血液が流れなくなりますが、足の中にある他の静脈が代わりに役割を担うため、足全体の血液循環には問題ありません。

レーザー治療(血管内焼灼術)のメリット・デメリット

レーザー治療(血管内焼灼術)のメリット・デメリット

レーザー治療のメリット・デメリットについて見ていきましょう。

メリット

  • 切開創が目立たない
  • 早期の日常生活への復帰が可能
  • 逆流による血液の溜まりがなくなり、足が軽くなりむくみやだるさなどの症状が改善する
  • 局所麻酔での治療が可能
  • 高い有効性
  • 身体への負担が少ない

デメリット

  • 焼灼による血管の「やけど」状態が生じ、治療後に「ツッパリ感」や「チクチク感」がある
  • 術後に一定期間の弾性ストッキングの着用が必要

他の治療方法との比較

他の治療方法との比較

下肢静脈瘤の主な治療方法には、次世代の治療方法である「グルー治療(血管内塞栓術)」や、古くからの治療方法である「ストリッピング手術」があります。

グルー治療(血管内塞栓術)
2019年12月に国内でも保険治療として認められた比較的新しい手術です。レーザー治療と同様、カテーテルを静脈の中に挿入し、内側から医療用の接着剤(グルー)を注入して血管を塞ぎます。

グルー治療(血管内塞栓術)

ストリッピング手術
ストリッピング手術は従来から行われていることで多数の治療実績がありますが、現在では低侵襲なカテーテル治療が主流となっているため、施術件数は減少しています。
足を1~2cmほど切開し、「大伏在静脈」を露出した後、ストリッパーと呼ばれる長い針のような器具を挿入し、静脈を摘出します。
下肢静脈瘤の原因となる静脈を取り除くことで、症状を改善し、再発を防ぎます。

処置室

以下、それぞれの治療方法についての比較表です。

レーザー治療グルー治療ストリッピング手術
麻酔の使用局所麻酔
(麻酔量が多い)
局所麻酔
(麻酔量が少ない)
全身麻酔
または腰椎麻酔
治療の創口一箇所
(カテーテル挿入のため)
一箇所
(カテーテル挿入のため)
数カ所
(1~2cmほどの切開創)
術後の状態軽いやけどのような状態異物感がある神経障害が残る可能性有
術後の痛みややありほとんどなしあり
適応の範囲広い複雑な下肢静脈瘤や
アレルギー体質の方は不向き
広い
合併症・血栓症
・皮下出血
・アレルギー反応
(痒みや発赤など)
・神経障害
・血栓症
・皮下血腫
術後のストッキング着用必要不要必要
入院の有無日帰り手術が可能日帰り手術が可能入院が必要なケースがあり

どの治療が優れているというわけではなく、それぞれの治療方法にメリット・デメリット、適応の有無があります。
執刀する医師は、下肢静脈瘤のタイプや患者様の状態を判断し、最も適した治療方法を選択しなければなりません。

治療費用

レーザー治療(血管内焼灼術)は、保険診療となりますので、医療機関によって費用差はほとんどありません。
また、保険診療となりますので「高額療養費制度*」や「限度額適用認定証*」の対象となります。
また、ご加入されている医療保険によっっては、手術給付金の支払い対象になることがありますので、あらかじめ確認しておきましょう。

3割負担2割負担1割負担
片足の場合約35,000円約24,000円
(上限額:18,000円)
約12,000円
(上限額:18,000円)
両足の場合約70,000円約48,000円
(上限額:18,000円)
約24,000円
(上限額:18,000円)

上記以外にも、その他諸費用がかかる場合があります。詳しくは、受診するクリニックのホームページをご参照下さい。


*高額療養費制度
日本国内においては、高額になった医療費が生活を圧迫しないように、医療機関や薬局での窓口で支払う医療費が1ヶ月(1日から末日まで)で上限を超えた場合に、超えた分が支給される制度です。上限額は、年齢や所得に応じて定めらています。

*限度額適用認定証
高額療養費制度では、後から払い戻しを受けられますが、一時的に自己負担しなければいけません。
医療費が高額になりそうなときは、あらかじめ限度額適用認定証を取得し、窓口で保険証と併せて提示することによって窓口でのお支払いが自己負担限度額までとなります。

どちらの制度を用いても、合計でお支払いする費用は変わりません。
詳しくは下記サイトをご覧ください。

高額療養費制度について
限度額適用認定証について

まとめ

下肢静脈瘤のレーザー治療(血管内焼灼術)は、身体への負担が少ない「低侵襲」な手術であり、有効性の高い手術です。
国内での治療実績もあり、現在では下肢静脈瘤に対する基本的な治療方法の1つとなっています。
しかし、全ての下肢静脈瘤をレーザー治療(血管内焼灼術)で治せるわけでは無く、患者さまの身体の状況や下肢静脈瘤の症状によっては他の治療方法が有効的なケースもあります。
そのため、それぞれの治療方法について理解し、医師と共に患者様に合った方法を選択することが大切です。

当院では「下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医」である院長「平本 明徳」医師が全ての治療を行なっています。
現在(2023年10月)における下肢静脈瘤のすべての治療方法を当院にて対応できますので、十分な検査や診察を行った上で、患者様に対して最善な治療方法をご提供させていただきます。気になる下肢静脈瘤の症状のある方はお気軽にご相談ください。

下肢静脈瘤の症例について

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