下肢静脈瘤は自分で治せる?自然に治る?下肢静脈瘤の専門医師が解説

昨今、インターネット上で「下肢静脈瘤 自分で治す」「下肢静脈瘤 自然に治る」などの記事をよく見かけます。また、そういった背景もあってか患者様から「下肢静脈瘤を自分で治す方法はありますか?」という主旨の質問を受けることも少なくありません。

結論、下肢静脈瘤は一度発症してしまうと専門とする医療機関で治療を受けない限り、自然に治ることはありません。残念ながら、マッサージなどで一時的に症状が和らぐことがあっても治ることはありません。しかし、下肢静脈瘤になる前であれば予防する方法はあります。

この記事では、下肢静脈瘤の正しい知識について下肢静脈瘤の専門医師が解説します。

監修者情報

記事監修者 さかえ血管外科・循環器クリニック 院長 平本明徳
さかえ血管外科・循環器クリニック
院長 平本 明徳

大学卒業後は、関東エリアを中心として心臓血管外科医として豊富な治療経験を積み、前任地では下肢静脈瘤の治療の専門としてこれまでに7,000例以上の治療実績を持ちます。2020年にさかえ血管外科・循環器クリニックを開業し、「人生を楽しむための下肢静脈瘤治療」をテーマに下肢静脈瘤治療を中心に日帰り外科治療を行なっています。

【資格】
・日本外科学会認定 外科専門医
・日本脈管学会認定 脈管専門医
・日本脈管学会認定 研修指導医
・心臓血管外科専門医(2015~2019)
・下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医
・弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター

そもそも下肢静脈瘤とは?

下肢静脈瘤とは

人間の血管には、心臓から酸素を豊富に含んだ血液を全身の隅々まで運ぶための動脈と、全身で酸素が消費された血液を再び心臓に戻すための静脈の2種類があります。

下肢静脈瘤とは、特に下肢の静脈に生じる疾患で、足の表面に血管がボコボコと浮き出たり、足の浮腫や怠さなどが酷くなるといった症状をもたらします。

足の静脈は心臓から最も離れた場所に位置し、足の静脈に溜まった血液は、重力に逆らって心臓まで戻る必要があります。

足の静脈は、その周りの筋肉(脹ら脛の筋肉など)が「収縮」と「弛緩」を繰り返すことにより血液を押し上げるのですが、同時に、血液が下に落ちてこないように静脈内にはハの字のような弁「逆流防止弁」が備わっているため、重力に逆らって心臓まで戻ることが出来ます。

下肢静脈瘤では、何らかの理由でこの弁が壊れてしまい血液が足に溜まるようになり、むくみや足のだるさを生じたり、足の表面にある静脈がボコボコと膨らんだりします。

下肢静脈瘤の原因には、遺伝的な要因や妊娠、出産、長時間の立ち仕事などがあり、また、男性よりも女性、若い方よりも高齢の方に発症することが多いです。

下肢静脈瘤は一度発症すると自然に治ることはありません

前提として、下肢静脈瘤は良性の疾患になりますので、必ず治療をしなければいけないわけではありません。しかし、下肢静脈瘤は基本的には進行性の疾患ですので、症状を改善するには治療が必要となります。
よくインターネット上に下肢静脈瘤を自分で治す方法としてストレッチや運動、マッサージ法などを謳った記事や動画などが散見されますが、発症する前の予防や症状の一時的な緩和に繋がっても、下肢静脈瘤が自然に治ることはありません。また、下肢静脈瘤の種類によっては、マッサージなどで刺激を与えることが好ましくないこともあるので、治療が必要か否かを判断するためにもまずは専門の医療機関を受診することをおすすめします。

下肢静脈瘤は予防することはできる

下肢静脈瘤は、足に血液が溜まるようになった結果、足の静脈内の逆流防止弁が壊れてしまうことによって発症することが多いです。したがって、まずは足に血液が溜まらないように生活習慣を改善したり、日常生活に工夫を取り入れたりすることが大切になります。

下肢静脈瘤にならないために「日常生活でできること」や「予防体操」などについては下記の記事で詳しく解説していますので、合わせてご一読ください。

下肢静脈瘤は何科を受診したらいい?

下肢静脈瘤を専門として扱うのは、「血管外科」になります。

しかし、日本国内においては血管外科を専門としている医療機関は決して多くなく、心臓血管外科で血管外科の病気を診察しているケースが多いです。その他、一部皮膚科や形成外科などで診察しているケースもあります。最近では、ホームページなどでも記載していることが多いので、しっかりと調べてから安心して任せられる医療機関を選ぶようにしましょう。

下肢静脈瘤の病院選びのポイント・注意点などについては下記の記事で詳しく解説しています。

まとめ

近年、病気や疾患のことについての情報もWEB上で簡単に取得できるようになった一方で、誤った情報や誤解を与えてしまうような情報も少なくありません。これは下肢静脈瘤に関わらず、医療情報は特にご自身の健康などに関わることですので、発信にちゃんと根拠があるか、誰が発信しているかなどを見極め、正しい知識を身につけるようにしましょう。下肢静脈瘤は、良性疾患であることに加え、見た目上にも症状が現れることから受診を躊躇ってしまう患者様や受診を決めるのに数年間かかったというような患者様も少なくありません。当院では、そういった方々に対してLINEやメールでのご相談も承っていますので、お気軽にご活用ください。